白石一文『僕のなかの壊れていない部分』(6)

「でも、ようやく自分の将来に目が向くようになったんだから、精神的にはずいぶん逞しくなってきたと思うわよ」
相変わらず枝里子は楽観的だった。

畑違いな本であったが、それなりにガッツポーズどころもあり、何だか妙なのめりこみもあり、多少重いとは思いながらも駅のゴミ箱に投げ捨てることなく読み終えられた。「どうして僕は自殺しないのだろう?」てう帯のコピーもあるし、生きることや死ぬことに関する主人公のもやもや(理屈っぽさのわりに流れがわるい)が主テーマなの、か。でも、「絵里子さんはとってもいい人ですけど、先生や雷太さんや私とは全然違う人間ですから」という台詞のほうが収めとしてすっきりするというか、全体を通してそういう物語に感じた。それはさておき、装丁の絵は、何か深い意味があるのだろうか。とまれ、少し時間を置いてから再読したい、かも。