殊能将之『ハサミ男』(7)

「やめろと言いたいのか」
「いや、そんなことを言うつもりはないね」
医師はすぐに、いつものからかうような口調に戻って、
「きみの好きにするがいい。きみのやりたいようにすればいい。ただ、きみには自分が何をしたいのか、まったくわかっていないだろうけどね」

ミステリィを読んでいてもあまり考えていないので、基本的にすべてのミスリードに足をつまずく。それが気持ち良いと思う。饒舌な皮肉屋の出る文書は好き。あまり期待せずに読みはじめたのだが、充分に楽しめた。