殊能将之『黒い仏』(2)

中村にとって、ホークスの勝敗は天気のようなものだった。
「今日は朝から晴れて、いい天気ですね」
と言うかわりに、
「昨日、ホークス勝ちましたね」
と挨拶すれば、とりあえず会話は成立する。
ただし、
「若田部がいいピッチングしたよね。去年に比べて、格段に成長したよ。工藤の抜けた穴をみごとに埋めてくれた。もうエースと言ってもいいんじゃないかな」
などと問いかけられても、なんのことやら、ちんぷんかんぷんだった。天気の話をしていて、いきなり移動性高気圧がどうのこうのといわれても理解不能なのと同じだ。

ハサミ男』が良い感じだったので、著者つながり。序盤の仏教ネタで大ガッツポーズ作だった京極夏彦鉄鼠の檻』との脳内距離を近づけていたら、突然の超能力バトルな展開で、間違えて文章のしっかりしたオタ系文芸サークルの機関紙を覗き見たかのようなぐったり感。(物理的に)常識的な推理をする探偵と、(半笑いで)超能力による後付工作をするワルモノ。再読したいとは思わないが、変な肩透かしも含めて、面白いと言えば面白い。のだろうか……。次行こ次。