清涼院流水『19ボックス 新みすてり創世記』(3)

淡々とした口調で、「探偵役」なる謎の人物は解説を始めた。小説が壊れていく……地の文も会話も解体され、箇条書きのような調子で解決へと流れ込む。聴衆による、わざとらしい驚きのリアクションや単調な相槌もなく、読者の推理する様々な可能性、ダミーの解決のために張りめぐらされている多くの伏線を敢えて無視し、ただ冷酷無比な「真実」のみが、「登場人物」たちに突きつけられた。

4つのおはなしがあり、読む順によっておはなしの受け取れ方が変化する、というおもしろギミック付きの本。伝説伝説したがる文章に対する恥ずかしさはさておき、ミステリィをただのミステリィに終わらせない工夫を(キャラ萌えなどとは異なる方向で)しようとしているなあと関心した。おはなし同士が関係ないようでいてすべてがすべてに関係しているので、確かにまあ、読む順で色々違って読めるのかしら。おもしろいことを考えるものだ。それでもあまり楽しげな感想が残らないのは、ただもう自分が流水本に向いてない、ということなのかも。105円は無駄ではなかった。