北村薫『秋の花』(4)

もっともよく聞くと、発表当日の土曜日曜には九州からしっかり背の君がいらっしゃるそうだ。彼氏は今年卒業した、そのサークルの先輩なのだから、来て当たり前といえば当たり前だが、まあ、脇で見いている立場としては肩をすくめて《御馳走様》といいたいところである。
「−−イタダキマス」
ちょこんとお辞儀をさせると、うさぎをはずし、正ちゃんは湯呑み茶碗を手に取った。

《円紫さんと私》シリーズ第3作。シリーズ初の長編にして、初の殺人事件(?)。円紫さんの出番の少なさと、相変わらず尋常でない脳を与えられてるな感。《私》が悶々とあれこれ考える役、円紫さんがいきなり真実だけ見抜く役。《私》と正ちゃんの会話はそこそこにあるので、前作同様にやにやできる。間延びした気がするのは、長編になったからなのか、ヘヴィな事件が《私》周辺で起きたからなのか。とまれ、これまでに比べると少しガッツポーズ度が低い気がした。こんなときこそ急いで次作!と考えて近所の本屋に行ったら、創元推理文庫自体見当たらなくて残念。次読みてえー。