北村薫『六の宮の姫君』(3)

榊原さんは、日本酒をくいくいと飲んだ。水のように、といいたいが、水だったらあんなには飲めないだろう。

《円紫さんと私》シリーズ第4作。事件はなく、《私》の卒論の題材である芥川龍之介まわりのいろいろをときほぐしてゆく。日常に潜む謎を解き明かすのがこのシリーズの楽しみどころなのではあるが、前作までとはまた趣きが違うというか、ありていにいえば、口に合わなかった。《私》と正ちゃんとの会話もそれなりにあるのだけど、どうもガッツポーズどころが。ミステリィというジャンルの広さを知った、としておこうか。《私》の就職先が決まって良かったね、という《私》ファンの感想も。