「振られたんだろう、オルツィに」
うっと声を呑んで、カーは血が滲まんばかりに唇を噛んだ。
「でも、エラリィ、カーが犯人なら、死体を整えてあげたりはしないでしょう」
嘲笑混じりにアガサが言い放った。
「カーはそれをしない唯一の人間よ」
本格本格した本は特に理由もなく避けてしまうのだけど、ものはためしということで。ミステリィ的なたのしさというのは、きっとこういうことなんだろうな、と感じた。ガッツポーズできるような言い回しはほぼ皆無なのだけど、物語としてはわるくないし、多分再読もそれなりに楽しめるはず。でも、何にせよ、ガッツポーズできない本はなかなかつらい。