西澤保彦『完全無欠の名探偵』(5)

nksn2005-08-10

超常的な“力”に導かれているという前提に立てば黙っていても真相は向こうからやって来てくれる筈だ。態度としてはいい加減かもしれないが理屈としてはそうなる。つまり論理的に推論を進めたりすることなぞ不要ということだ。自分で何かしようなどと思わずに、ただ待っていればいい。

SFミステリィ?と聞いていたので、逃げる準備を万端にして読み始めたのだが、楽しく最後まで。山吹みはるを前にすると、誰もが潜在的に持っていた謎を掘り起こされ、知らず知らずのうちに自ら推理をはじめてしまう。みはる自身にはその“能力”についての自覚がないのだが、やがて周囲のひとたちの抱えていた謎がすべて繋がってゆき……、というおはなし。地の文の軽さというか立ち位置のわかりにくさが多少気になったが、他の西澤本も読んでみようかな、と思える面白さは、あった、かな。会話がもっと面白ければ良いのだけど。