高田崇史『QED〜ventus〜 熊野の残照』(5)

nksn2005-08-11

あのね、と桑原さんは三人を見た。
「きみたちは、自分で調べようという気が全くないのか?」
「ありますあります」沙織さんが、タッと手を挙げる。「自力でタタルさんに訊く」

隠された歴史を解き明かすQEDシリーズも、はや第10作。今回は、奈々や崇と同行する神山禮子の視点で記述される。ゆえに崇に関する描写の酷さは序盤から笑えるが、終始落ち着いた感じ。しかし何よりも喜ぶべきなのは、これまでの作ではいつもとってつけた感の否めなかった表舞台で語られる殺人事件とその解決が、ついになくなったことか。それでもちゃんとミステリィしてる(森博嗣『今はもうない』と似た構造だな)。シリーズ中では上位に入れたい面白さ。歴史ネタは熊野詣など。