清水義範『死神』(5)

どうして、たまたまきいた故人の一言の中に、その人の存在を折り畳んでつめこんでしまうのか。そんなふうにとられるなら、あんなこと言わなきゃよかったと故人が思うのかもしれない、という発想がそこにはまるでない。なぜなら、死者には発言権がないからである。死んだ者は、生き残った者の自己表現の道具なのである。

清水義範お得意のドタバタ笑いは少なく、ツッコミの少ないコメディ、といった感じ。読者がツッコミ役なのかしら。薄っぺらく、読み捨てに適した重さ。