倉知淳『日曜の夜は出たくない』(3)

「ちょっとお、どうにかしてくれよお、船頭さん、オレ泳げないんだからよ」
 シゲが泣いて訴えると、相手は猫みたいにまん丸な目を向け、
「どうにかって云っても、僕だってこんな荒れた海で泳ぐ趣味はありませんよ。こいつはもうどうにもなりませんな。それに船を下りた今、僕はもう船頭さんじゃなくなりました。猫丸といいます」

連作短編7本と、追記2本。探偵役が変人、というミステリィは多いが、さらに全く格好良くない、という、何とも愛しづらいキャラクタづくり。神出鬼没の猫丸先輩が、色々な謎をあっさり解決するお話。あっさりしすぎ、というか推理足りなくないか、と感じていたら、追記で「そこまで仕掛けでした」みたいなお遊び(少し悪趣味かな、と思った)。『星降り山荘の殺人』と同じく、ミステリィ的な楽しさは充分なのだけど、会話萌えびととしては、今ひとつ感。でも、表題作「日曜の夜は出たくない」はとても良い。