田口ランディ『コンセント』(1)

「それは、話すとものすごく長いし、まだあなたには話したくないな。今のあなたに話そうとしてもわたしはきっと自分の体験をうまく語れないと思う。朝倉さんはどっかで、私をオカルト趣味だと思って軽蔑しているでしょう。私に起こったことはどんなに奇妙でも私だけに意味があり、体験していないあなたにとっては、それ以上でもそれ以下でもないものなの。でも、その結果として今の私が存在している。今の私を単なるオカルト趣味だと思っている人に、自分の体験を話すほどのエネルギーを私はもちあわせていない。語るって、相手の聞く力に支えられてできる行為なんだよ。そうだったでしょ? 元カウンセラー候補生」

ミステリィだと勘違いして買ったのだが、わりと良本だったのでセーフ。腐乱死体に関する記述やセックスの描写がやや重い(特に、後者の類いは総じて余り好まない)のだが、引き込まれた状態で読むことができたので、まあ。心理系と見せかけて精神世界系へと持って行かれるあたりではやや「?」を感じた。解説でも触れられているラスト5ページについては、なければないで落ち着かないのかも。