加納朋子『ガラスの麒麟』(2)

「どうして閉じこもる必要があるの?」
「不安だから」菜生子の返事は短く、明瞭だった。「雷が鳴っている時に、布団をかぶるようなものですよ。誰だって、不安からは逃れたいんです。そして人間の不安感って、その原因の多くは人間にありますよね……うんと煎じ詰めれば、ですけど。彼女たちは決して、雷に怯えたわけじゃないんですよ」

短編六本。安藤麻衣子の死と、それに関わるひとびとを描き続ける。最終作「お終いのネメゲトサウルス」で明かされる安藤麻衣子の死の真相については「え? で?」感もあったが、ひとりの死が生むさまざまなできごとで短編6つ続けられるあたり、地味な凄み。当たりの内。