イポリト・ベルナール『アメリ』(3)

「奇跡が起きた」とブルトドー氏はカウンター越しに店主に言いました。
「天使が奇跡を起こしてくれた。公衆電話が俺を呼んだんだ」
 カフェに入ってきて、いきなりこういうことを言い出す客が時にいるものです。店主は相手にせず、「電子レンジが俺を呼んでる」と言って、厨房に消えました。

テレビ放映を見て大いに楽しめたところに古本屋で見つけたものだから、買わずにいられない。そんなアメリ的な出会いはともかくとして、少し変わった女性の、何かが少し変わり始めて周囲にも変化をもたらしてゆく過程でにやにやするおはなし。先に見た映画の妙な色調・すてきな音楽がバックグラウンドで支援演出するのだが、映画にあった小話並列進行具合や、それでいてやたらテンポが良かったりするところが、小説では、今ひとつ。映画で意味のわからなかった箇所の補足資料としては、大いに楽しめた。