加納朋子『虹の家のアリス』(1)
「どうしたんですか、改まって。私たち、いつだって楽しくおしゃべりしてますよね」
「そうやって、いつも君は笑っている」穏やかに、仁木は言った。「場合にもよりけりだけどね。いつも笑っているっていうのは、結果的にひどく不誠実なことなのかもしれないよ。相手を不安にさせてしまう……本心が見えないからね。いつも仏頂面の誰かさんの方がよっぽどわかりやすい」
「……誰かさんって、誰?」
小さく笑って、安梨沙は尋ねた。
《アリス》シリーズ2作目。短編6本。前作『螺旋階段のアリス』に比べると、既出キャラクタの掘り下げに重みを割いている気配。脱サラ探偵・仁木の葛藤は流され気味。萌えキャラ・安梨沙の成長ものにも見えてきたが、それでもよいので次作に期待。文春文庫版の装丁が素敵。