西澤保彦『黒の貴婦人』(1)

nksn2006-02-17

「あのね、警察がどうするか、なんてことに興味はないの、わたしは」タカチってば、妙に凄むような声でタックを睨む。「あなたはどう考えるのか、と訊いているの」
「え……いや、だから」トイレに行きたいのを我慢しているみたいな、そんな、なさけない顔で身をよじるタックだけれど、先輩からもあたしからも助け舟を期待できないと見てとったのか、観念したみたいに、「……無責任な想像でよければ」
「わたしたちが、いま何をしていると思ってたの? 無責任な想像のぶつけ合いでしょ」

《匠千暁》シリーズ8作目。短編五本。タカチ・ボアン先輩は就職し、ウサコは院生になり、タックはフリーター。時の流れが何だかもったいないシリーズ。『スコッチ・ゲーム』以降親密になってゆくタックとタカチについては、あまり書かれず。各話何らかの形で登場するタカチの女神的な扱われ方。たまにタックが猫丸先輩に見えて仕方がない。