舞城王太郎『熊の場所』(2)

nksn2006-03-11

 この大きな恐怖を、僕は何とかしなくてはいけない。このまま抱えて今日と明日とあさってを迎えてはいけない。そう考えたのは僕が小学校五年生にしては利発で賢明で勇気を備えていたから、ということではなくて、僕よりずっと賢明で頑強で、いささか豪放磊落気味な人間である父親の、かつて語ったある体験談を、たまたま僕が聞いて憶えていたからだった。

短編3本。強烈な疾走感、というか疾走している何者かに首根っこ引っ掴まれて引きずり回されてる感。やっぱ舞城本すげー。ひと段落が長くて会話はインラインばっかで、引用しにくさ。2本目『バット男』は、村上春樹の匂いも少し。