坂木司『青空の卵』(6)

 扉を開けた瞬間の、鳥井の動きは見物だった。彼の目線は、僕とまりおくんの間を何度も確かめるように行き来して、しまいには天井に到達したのだ。
「どうしたんだよ、鳥井」
 上を向いたまま、両手を腰に当てた鳥井が言う。
「見たくねぇ」
「何が」
「お前の隣にいる小さな人間が」
「ああ、彼はまりおくんて言うんだ」
「言うな、名前を!」
「何で?」
「俺はそいつの人格を認知して、相手をする気がないからだ」

《ひきこもり探偵》シリーズ?、第1弾。短編5本。創元(日常)系。いちいちまっすぐで近視眼的な青臭いことばが出て赤面してしまうこともあるが、まあ。王様と子供を行き来する探偵役・鳥井のキャラは今ひとつ固まり切っていない感じもあるが、王様キャラ好きとしてはちゃんとガッツポーズできる本であった。続編に期待。