伊坂幸太郎『陽気なギャングの日常と襲撃』(5)

「じゃあさ、僕がそこを見に行くよ」久遠が手を軽く、叩いた。
 成瀬が見ると、久遠は、「あ、その目はあれだ。不安に思ってるわけだ。僕が一人でできないと思ってるんだ」とあからさまに不機嫌になった。
「心配はしていない」成瀬は笑う。
「私も一緒に行こうじゃないか」響野が腕を組み、多忙な上司が、部下のために無理をして助太刀することを決断したかのような、言い方をした。
「急に不安になってきたな」成瀬は言う。
「わたしも」と雪子がうなずく。「わたしも心配になった」
「僕、やっぱりやめておこうかな」
「おいおい、私一人じゃ不安じゃないか」と響野が真剣に訴えた。

陽気なギャングが地球を回す』の続編。小憎たらしくも愛らしい4人の銀行強盗。相変わらず軽口を叩き続け、それでも有能なリーダーがすべてをうまくまとめてゆく。地の文は至極淡々としているのに、会話文の巧さで、全体像は非常にウィットに富んだもの、という印象に。伊坂本は外れがなくて良い。