米澤穂信『氷菓』(1)

 もっともな疑問だ。文化祭の資料の在処など、たまの手紙でイスタンブールからわざわざ伝えなければいけないほど重要なこととも思えない。だがそこはそれ、姉貴のことだ。折木供恵がなにを重要と思っているかなど、誰にもわかるまい。
「手紙が来たのは確かだ。内容の真偽までは知らん。見るか?」
 手紙を広げ手近なテーブルに置くと、伊原と千反田が寄ってくる。二人が文面を追う間、沈黙が降りた。それを破ったのは千反田の方だった。
「……トルコが好きなんですか?」
「世界が好きなんだ」
「素敵なお姉さんですね」

古典部》シリーズ第1作。仲間集めや後々絡むひとの軽い紹介、日常系の謎解きなどをテンポ良く進め、33年前の事件に迫る学園ミステリィ? 会話は、わるくなく、しかしガッツポーズするほど良くもなく、な微妙ライン。ひとつひとつの章が短く、また全体でも200ページ程度しかないので、軽く読めるのは良いのでは。キャラクタの魅力方面については続編に期待。