青井夏海『赤ちゃんをさがせ』(3)

「こんなのはどうです? サツキさんの実家は事業に失敗して、加々見さんの援助を受けてるんです。だからサツキさんは加々見さんに逆らえない」
 聡子さんの手のボールペンを見つめながら、わたしは言った。
「さあねえ」
「きっとそうですよ。そもそも、サツキさんが加々見さんと結婚したのもそういうわけだったんじゃないですか。ちょっと年が離れすぎてるもの」
「年の離れた夫婦なんていくらでもいるわよ。もっと簡単な理由かもしれないわよ」
「たとえば?」
「愛してるから」
「珍しい。聡子さんが冗談言ってる」

自宅出産専門の出張助産婦コンビが遭遇する謎を「伝説のカリスマ助産婦」明楽先生が解き明かす、日常系?ミステリィ。短編三本。助産ばなしなので登場人物に女性が多く、登場する男性の、心地よい滑稽さ。NHKあたりでドラマ化されそうだなあ、と思って読んでいたら、本当にされてた。