伊坂幸太郎『重力ピエロ』(4)

「あれは何かの前触れだったかもしれないな。盗難の後に放火。次はもっとたちの悪い犯罪が起こる。そういう前触れだ」
睡眠薬は、きっと不眠症に悩む社員が盗んだんだ」
「俺なんて、会社にいるだけで眠れるけどな」
「全員が全員、おまえみたいに優秀な体質じゃないんだよ」
「だよなあ」
「皮肉だよ、皮肉」
「あ。俺の耳ってさ、皮肉とか嫌味を濾過しちゃうから」
「濾過しちゃうかあ」
「久しぶりに飲みにいこうぜ。おまえの奢りで」
「そんなに偉そうに奢られる奴をはじめて見た」

相変わらず、軽口会話の気持ちよさ。重い雰囲気にあっても、それは同じ。あと、伊坂本は無駄キャラがいない印象。皆がそれぞれそれなりの役割を与えられている。