森博嗣『λに歯がない』(3)

nksn2006-09-10

「今ひとつ」山吹が言い直す。
「うーんと、まあ、口をきいてもらえただけでも感謝ですね。待って下さいよ、今に凄いのを考えつきますからねぇ。加部谷が思考の総力を結集して謎を解いてみせますからねぇ」
 十秒間の沈黙。その間、山吹はお茶をすすり、海月は文庫本に視線を落としていた。
「あ、わかった!」加部谷は立ち上がった。しかし、そこでにっこりと笑う。「という振りをしてみましたけど……」
 山吹が投げかけていた冷たい視線が、さらに氷柱のように鋭くなり、彼女を突き通した。
「うーんと、なんか、軽蔑混じってますよね。軽蔑を水で溶いて、掻き混ぜて、これを飲め、俺の軽蔑が飲めないのか、みたいな」

Gシリーズ5作目。山吹・海月・加部谷組、犀川・萌絵組に続き、保呂草・各務組も参戦してきて、キャラクタが混沌と。加部谷の紫子ちゃん的ハイテンション空回りセンテンスが、安定性能を発揮。犀川・萌絵の会話多め。何だか、シリーズファン以外は厳しくなってきたのではと思う。