舞城王太郎『好き好き大好き超愛してる。』(2)

 「ねえ、奪うこと、なくすこと、分からなくなること、分かろうとしなくなること、見なくなること、見えなくなること、こういうことって悪いことじゃないよ」
 ここまで無言だった僕が天井に言い返す。「それってあの三人の強盗のこと?正当化できないよ、そんなことじゃ」
 「あなたがあの三人から奪ったこともね」
 そう言われて僕は黙る。
 天井から女の子がくるりと回って降りてくる。ベッドの上の智依子の足もとに立つ。智依子を見下ろしながら女の子が言う。
 「与えること、見つけること、見つけられること、もらうこと、自分のものにすること、自分のものであると分かることも、悪いことじゃないけどね」

表題作と「ドリルホール・イン・マイ・ブレイン」の二本立て。どうあっても泣けない、そして笑えない、恋愛小説。表題作は、舞城本らしい勢いが章割りで意図的に殺されている感。「ドリルホール〜」は、勢いはあるけど中身がぶっ飛びすぎていて、ついてゆくのに精一杯。正直、よくわかんない本だった。