高田崇史『QED〜ventus〜 御霊将門』(1)

nksn2006-12-10

「失敬な」外嶋は憮然とした顔で眼鏡を外すと、ポケットチーフで丁寧に拭った。「自分が花粉症ではないからといって、そんな悪口雑言ばかり叩いていると、天罰が当たるぞ」
「あら、外嶋さん珍しい」美緒はイスごとくるりと外嶋に向いた。「天罰だなんて、随分と非科学的なことをおっしゃっちゃって」
「非科学的ではない人間には、非科学的ではない現象が降りかかるんだ」
「そちらこそ、何と失敬な!」
「何が失敬だ。そもそもぼくは、きみに対して失う敬意など初めから持っていない」
「これまた問題発言! パワー・ハラスメントだ」
「全く日本語になっていない」
「最初から日本語じゃないですっ」

旅するQEDシリーズ、12作目。いつの間にか、ずっと読んでいるシリーズものでは最長になっていた。日本三大怨霊のひとつに数えられる平将門について。事件は軽く次作に追いやって、政治的理由で塗り替えられた将門公の真の顔をテンポ良く。しかしま、片目→製鉄とか、河童・天狗→朝敵とか、日本史読み解き時の基本則は、シリーズ通して読んでいないと把握できなくなってきてるぽ。全部読んでいても結構忘れている。雑学勉強小説。漫画でいったら『もやしもん』。