蘇部健一『六枚のとんかつ』(1)
「いいかい、今度の事件は、推理小説でいうところの人間消失というやつだった。だがね、人間消失と言うと、いかにもむずかしそうに聞こえるが、いったんそのトリックの謎が解明されてみれば、それはみんな実に単純で簡単なものなんだよ。なにしろ、食堂の見本のスパゲッティのフォークが宙に浮く時代だからね。この世に不可能なんてことはないんだよ」
「超絶アホバカ・ミステリの決定版」の謳い文句に間違いなし。アホバカというか、脱力というか、下ネタ満載で下品なコメディタッチミステリィ短編集。アリバイ崩しものはなかなかすごいが、ちゃんと一編一編の最後にはオチをつけてくれて、小気味良い感じ。一周してクール、あるいは、一周半して寒い。ぐっとくるところは皆無だが、他の蘇部本を読んでみたくなった。