坂木司『動物園の鳥』(2)

「寺田さん寺田さん寺田さん! 会いたかったー!」
「わ、重いよ。久しぶりだねえ、美月ちゃん」
 抱き合う二人を、鳥井とボクは呆然と見つめるしか術がなかった。なんというか,ジーンズに革ジャンを着た寺田さんと、ピンクのモヘアがついたコートの美月ちゃんはお似合いのカップルに見えたのだ。
「ほら、眼鏡が落ちちゃうから離れて」
「やだやだ。だってすごくすごく久しぶりなんだよ? わかってる?」
 銀縁のクールな眼鏡を片手で直しながら、寺田さんはこちらにぺこりと会釈をしてくれた。それに対し、鳥井は不機嫌そうに顎をしゃくって言う。
「おい。ここは目的地じゃない。いいかげん宝塚はやめろ」

ひきこもり探偵三部作,完結編.長編.鳥井がひきこもりになった原因の人物との対決,てうおいしいお話のはずなのに,なかなか盛り上がらないのはなぜかしら.正論をすべて台詞と坂木の語りで書き記してしまうことによる上滑り感? でも,まともすぎることを言う探偵てのも,珍しいといえば珍しいか.