西澤保彦『麦酒の家の冒険』(2)

「ちょっと待て。寝るために、というのはそれは、文字通りの意味なのか? 男と女が一緒に寝る、とかそっちの方の意味ではなくて、睡眠をとる、という意味の?」
「そうです。その人物というのは多分独りだと考えられますから」
「そりゃ独りだったら、エッチはできんから、ふて寝するしかないわな」
「別に、ふて寝しにくるわけじゃありませんよ。またそんな、シュールな冗談を」

匠千暁シリーズ第3作。迷い込んだ山荘には、ベッド1つと冷蔵庫、そしてロング缶のヱビスビール96本。タック・タカチ・ウサコ・ボアン先輩の四人が巡らす、この状況に至る過程の推理。話中ではひたすらビールを飲み続けているので、読んでいるこちらもひどくビールを求めてしまう。二日酔いのお伴にも良し。現在進行形の事件に対するアームチェア・ディテクディヴ。わりと楽しめたので、シリーズを読み進める気に。メインキャラが皆推理大好きっ子なので、タックの凄みが今ひとつ印象に残らないのが残念。