北村薫『街の灯』(3)

「いい度胸だな、女」
「格別、そうとも思われませんが」
「命が惜しくはないか」
「惜しくないわけがありません。ただ、当たり前のことがいえなければ、生きていても仕方がないでしょう」

新シリーズ《わたしのベッキー》第1作。昭和7年という時代設定、上流階級の令嬢、女性運転手。探偵役向きなベッキーさんをあくまで誘導役にとどめる趣向が、今後どう生きるのかしら。何にせよ、北村薫のシリーズものをリアルタイムに読めるのがうれしい。