倉知淳『猫丸先輩の推論』(3)

nksn2006-01-09

肉球の色は?」
「ピンクでした。きれいな桜色で、触るとぷにぷにして、撫でてやると、長い尻尾をぱたぱたさせてくすぐったがって−−」
「首輪はしていないんですね」
 またぞろ感傷的になる依頼人を、私は再度遮った。私もぷにぷにの肉球は嫌いではない。あれは柔らかくて気持ちのいいものだ。だが、肉球談義に花を咲かせて無駄にする時間はない。

《猫丸先輩》シリーズの、何作目かよくわからないけれど、連作短編集。短編6本。格好良くない神出鬼没の探偵役・猫丸先輩が、さまざまな場所でさまざまな謎解きをさまざまなひとに目撃される。日常系ミステリィなシリーズものというと、どうしても北村薫の《円紫師匠と私》シリーズが脳裏でおだやかな笑顔を浮かべてしまって困るのだが、猫丸先輩のこの脱力感は、独特。タイトルの通り《推論》止まりな亜解決も、慣れてくるとそれほど苦にならない。あと、久々に本を読んだ。