スズキユカ(原作:森博嗣)『迷宮百年の睡魔』

「僕は人間ではないんです」 「いいえ/あなたは立派な人間です/その尊厳をどうか捨てないで」 森博嗣の女王シリーズ漫画化第2弾。森本の漫画て、どうしてこうも読みにくいのか。小説→漫画変換時の削ぎ落としだけではない気がする。二日酔いの日には読みた…

高田崇史『QED 東照宮の怨』(4)

「真実ぅ?」中込は、大笑いした。「じゃあ、我々は、これから後生大事に、それを守っていかなくちゃあならんだろうなあ」 「護る?」今度は崇が鼻で笑った。「酷い驕りだ」 「なにい!」 「真実は、それだけで真実です。誰の庇護も必要としませんよ。自惚れ…

白石一文『僕のなかの壊れていない部分』(6)

「でも、ようやく自分の将来に目が向くようになったんだから、精神的にはずいぶん逞しくなってきたと思うわよ」 相変わらず枝里子は楽観的だった。 畑違いな本であったが、それなりにガッツポーズどころもあり、何だか妙なのめりこみもあり、多少重いとは思…

筒井康隆『富豪刑事』(1)

「世の中ややこしいんだ。わかったか」と、大助はいった。突然真顔に戻り、黒ジャンパーはつぶやいた。「世の中がややこしいなんて、誰も教えてくれなかったよ」ぐしゃり、と真顔を崩壊させて、また泣き出した。「おれはそれを知らなかったんだあ」 短編4つ…

舞城王太郎『阿修羅ガール』(3)

つーかそれ、「だけ」じゃないし。私の大事な左腕が。ご飯を持つ手が。これからご飯を食べる時にはマネキンとかバービードールみたいに左腕を肩からスポンと切り離して自分の部屋のベッドの下にでも隠して右腕だけでテーブルにつきたい。私の大事な左腕は、…

花沢健吾『ルサンチマン』3・4

「逃げてるだけじゃない。」 「あんただって逃げたくなることあるだろ。我々には現実世界に逃げ場すらなかったんだ。」 *失 言 小 町*(http://d.hatena.ne.jp/ryoko_komachi/20050516/1116253922)で大絶賛されていたので、本屋にあった3・4巻を購入。主…

コナン・ドイル(訳:延原謙)『シャーロック・ホームズの冒険』(4)

「ワトスン君、起こしてすまないね。しかし今朝はみんながそういう運命なんだよ。最初にハドスン夫人が起こされて、おかみが僕を起す、僕が君を起すという順序なんだ」 予想外に趣味から遠い文書であった。ホームズとワトスン君が延々トークしていてくれたら…

森博嗣『θは遊んでくれたよ』(6)

「はい」西之園は頷いた。「さすが、国枝先生」 「貴女のさすがは、誇張になってない」

伊坂幸太郎『ラッシュライフ』(7)

マジックを受け取ると白紙に、「心」と書いた。笑い出すのを堪える。 「こころ、ですか」白人女性が目を細めた。 「心にもないことを書いたわ」と京子は言い、そこを立ち去る。

舞城王太郎『世界は密室でできている。』(2)

誰もが想像しなかった酷い出来事が起こったとき、その責任を事態の認識の甘さに求めることは有効なのだろうか?だとすれば僕もルンババも警察官たちもマスコミの人間たちも皆等しく同罪だ。でももしある世界に属するほとんどの人間が有罪ならば、その罪は果…